アゾポリマーへのスキルミオン構造のダイレクトインプリントに成功!
-物質へのトポロジカルな準粒子の生成、消滅、操作への第一歩-

2024年04月12日

研究?産学連携

 中国体育彩票app分子キラリティー研究センターの尾松孝茂教授、宮本克彦教授、A Srinivasa Rao特任講師、中国体育彩票app大学院融合理工学府の田村理人さん、津田和樹さん、Fanny Getzlaffさん、インド工科大学ビライ校のPraveen Kumar助教授、デューク大学のNatalia M. Litchinitser教授らの共同研究グループは、アゾポリマー注1)に光の準粒子状態と呼ばれる光スキルミオン注2)を照射することで、光スキルミオンの偏光の渦構造(スキルミオン構造)を物質に直接転写できることを実証しました。スキルミオン構造が転写されたアゾポリマーの表面には、波長よりも大きな深さ(約600nm)の凹凸構造の上に、偏光の垂直方向に沿ったサブ波長スケールのリップル構造(深さは数10ナノメートル)を持つ表面レリーフが刻まれています。この結果は、スキルミオンのように、物質の形や配置を変えてもその性質が変らないトポロジカル物質に保護され安定した準粒子を、さまざまな物質中で光によって生成、消滅、操作できる可能性を実証し、物性物理学の新たな知見を与えるものです。
 本研究成果は、2024年4月4日(現地時間)に学術誌APL photonicsにてオンライン掲載されました。

注1) アゾポリマー:アゾベンゼン分子を含む高分子。可視光を照射すると光異性化反応を起こし、光の輻射力(光のエネルギーの流れに沿って物質に働く力)によって質量移動を起こす。その結果、照射光の偏光や波面を反映したユニークな表面構造(表面レリーフ)が形成できる。

注2)光スキルミオン:右回り及び左回り円偏光を北極と南極に配置したポアンカレ球上の球面座標で表現できるすべての偏光状態を2次元に投影した光。光断面には偏光の渦構造を有する。

  • 生成された Néel型の光スキルミオンの直線偏光成分と円偏光成分
    シミュレーション (上) と実験 (下)。 黒い矢印は偏光の方向を示す